サッカーのアディショナルタイムで何分伸びるのか?主審の判断基準と追加の内訳とは

サッカーのルール
サッカーのアディショナルタイム(AT)は、負傷対応や交代、VAR等で失われた時間を補うために主審が加える「最小限の追加時間」。本稿は何分伸びるのか、内訳と判断基準、長くなる近年の傾向まで実例で解説します。

  • 決め方:主審が第4審の情報を踏まえて算定
  • 主因:交代・負傷・得点後の祝福・VAR・遅延行為
  • 表示と記録:45+◯分/90+◯分、掲示分以上に延びる場合あり
  • 観戦&戦術:終盤の交代、時間管理、メンタルの読み解き

サッカーのアディショナルタイムとは?意味と目的

サッカーのアディショナルタイムは、前後半の規定時間内に「競技以外で失われた時間」を補うために主審が加える追加時間です。観戦者にとっては“おまけの数分”に見えますが、実際は試合の公平性を回復する厳密な仕組みで、負傷対応、選手交代、懲戒手続き、ビデオ判定(VAR)確認、得点後の祝福などで生じたロスを見積もり、最小限の時間を加えます。

加算は半ごとに独立して算定され、掲示分は「少なくともこの分数は追加する」という意味であり、掲示後にさらに中断があれば延長されます。ここを正しく理解できると、終盤の攻防や監督の交代カードの意図、選手の時間管理が何倍も立体的に見えてきます。

サッカーにおけるアディショナルタイムの定義

アディショナルタイム(Additional Time)は、前半と後半それぞれの終了間際に、主審が「競技そのもの以外の要因で失われたプレー時間」を補填するために付与する時間です。時計を止めないサッカーでは、交代や負傷、判定に伴う手続きでボールが動かない時間が必ず生まれます。その累計を半ごとに評価し、残り時間に上乗せします。

設けられる理由(試合の公平性を保つため)

もし追加がなければ、リード側は交代や遅延で時間を削るだけで勝率を上げられてしまいます。アディショナルタイムの思想は「競技の機会を等しく保証する」こと。意図的な時間稼ぎにも一定の抑止力が働き、両軍にとってフェアな土台が保たれます。

適用のタイミングと基本の考え方

前半45分と後半90分の直前に、主審はその半分で失われた時間を合計し、最小限を掲示します。掲示後のアディショナルタイム中に新たな中断(負傷やVARなど)が発生した場合は、その分を更に見込んで延長する運用が取られます。

「空費された時間」とは何か

空費時間には、選手交代、負傷選手の評価・退場補助、懲戒処置、VARのチェック/オンフィールドレビュー、得点後の祝福、クーリングブレイクなどが含まれます。一方で、通常のスローイン準備やゴールキックの所作など、競技の流れとして想定される短い中断は原則として加算の対象外です。

平均的な長さと近年の傾向

一般的なリーグ戦では1〜5分程度が多い一方、負傷や複数回のVAR介入が重なると2桁分に達するケースもあります。国際大会や主要リーグでは「実際に失われた時間をより忠実に反映する」動きが広がり、長めに感じられる場面が増えました。観戦時は「なぜ長い(短い)のか」を内訳で推測すると、審判の評価や両チームの戦術意図の読み解きに役立ちます。

  • 目的:失われたプレー時間の補填
  • 原則:半ごとに独立算定・最小限の追加
  • 主因:交代/負傷/懲戒/VAR/得点後祝福
  • 掲示:第4の審判が分数を提示(最小表示)
  • 延長:AT中の新たな中断は更に上乗せ
要素 扱い 観戦の見どころ
選手交代 加算対象 交代ラッシュの有無を終盤に確認
負傷評価・担架 加算対象 頭部・重症対応は長くなりやすい
VARチェック 加算対象 レビューの有無・長さを思い出す
スローイン等の準備 原則非加算 通常のリズム内なら加算されにくい
得点後の祝福 加算対象 ゴール後の集合時間が長いと伸びる

アディショナルタイムの決め方と計算方法

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サッカーのアディショナルタイムは主審が決定します。第4の審判員やその他の審判団が記録・共有してきた「失われた時間」の情報をもとに、主審が半ごとに総合判断し、最小限の分数を掲示します。掲示は“確約”ではなく「少なくともこれだけは追加する」という下限値。ここを誤解すると「掲示より長いのは不正では?」という誤解が生まれますが、AT中に新たな中断があれば上乗せされるのが原則です。

誰が決めるのか(主審の裁量)

最終決定権は主審にあります。副審や第4の審判員は交代・負傷・懲戒・VAR遅延などの出来事を逐次メモ・伝達し、主審が合算します。個別の出来事に秒単位の固定相場があるわけではなく、その半分の実態に合わせて評価します。

第4の審判員によるボード表示の仕組み

主審の指示で第4の審判員がボードに分数を表示します。掲示は端数を切り上げた整数分で示され、観客・選手・スタッフに共通の目安を提供します。掲示の分数は「最低限の追加」であり、AT中の中断は別途上乗せされます。

「最小限の追加時間」という考え方

掲示はあくまで下限。例えば後半アディショナルタイム5分の表示が出てから、負傷で2分止まれば総時間は7分程度に延びます。この“最小表示+上乗せ”の構造を理解すると、終盤の時計の進み方が腑に落ちます。

  1. 半分で起きた出来事を審判団が記録
  2. 主審が合計し「最小限」を決定
  3. 第4の審判員が分数を掲示
  4. AT中の新たな中断は主審裁量で更に上乗せ
出来事 加算の考え方(目安) 補足
選手交代 交代手続きの実時間を見込む 連続交代は合算で長くなる
負傷対応 評価・担架・復帰可否の実時間 頭部評価は長引く傾向
VAR チェック/レビューの遅延 オンフィールドレビューは長め
懲戒 カード提示・記録の時間 小競り合いがあると延びる
得点後 再開可能になるまでの実時間 抗議や確認で遅れることも
  • 掲示は整数分=「下限」
  • AT中の中断=「追加の上乗せ」
  • 秒単位の固定表は存在しない(実態評価)

ロスタイムとの違いと呼称変更の経緯

「ロスタイム」と「アディショナルタイム」は実務上は同義です。呼称の違いは文化的背景に由来し、現在は国際的な用語に合わせて「アディショナルタイム」が広く用いられています。用語が変わっても、根本の目的は「空費時間の補填による公平性の回復」。観戦や解説でも、より中立的・機能的なニュアンスをもつ呼び名が浸透してきました。

ロスタイムとアディショナルタイムは同義

意味は同じで、どちらも規定時間に追加される時間を指します。歴史的には“失われた時間”という訳語の影響で、ネガティブな印象を伴う場面もありましたが、運用は同一です。

日本での呼称統一の流れ

国内放送や競技運営でも徐々に国際用語が採用され、現在は「アディショナルタイム」が標準化されています。ルール解説や競技規則の参照先も国際基準を前提に説明されるのが一般的です。

用語が与える印象と国際基準

“追加(additional)”という語は、中立的で運用意図を端的に示します。国際大会の速報やデータ配信でもAT(Additional Time)や“+◯”表記が使われ、用語の統一は情報の相互運用性を高めています。

  • 意味は同じ:運用差はない
  • 国際基準の呼称に集約される流れ
  • 配信・記録で“+◯分”表記が標準化
呼称 ニュアンス 現在の主流
ロスタイム 失われた時間を取り戻す 歴史的呼称(国内で残存)
アディショナルタイム 公平性のための追加 国際・国内ともに主流

追加される時間・されない時間の具体例

アディショナルタイムの理解を一気に深めるには、具体例で「加算/非加算」を整理するのが近道です。加算は“競技以外”で失われた時間が中心で、通常の再開準備の範囲は原則として非加算です。ただし一見“通常”に見えても、抗議や小競り合い、混雑による大幅な遅延が生じれば評価に反映されます。以下の表で典型例を俯瞰し、終盤の時計と出来事のリンクを読み解きましょう。

追加される代表例(交代・負傷・VAR 等)

  • 選手交代の手続き・入退場動線の確保
  • 負傷選手の評価・担架搬送・復帰確認
  • 懲戒(カード提示と記録手続き)
  • VARチェック/オンフィールドレビュー
  • 得点後の祝福・抗議・再開準備
  • クーリング/ドリンクブレイク

追加されない代表例(スローイン等の中断)

  • 通常のスローイン・ゴールキック・コーナーの準備
  • フリーキックの一般的な位置合わせ
  • キーパーのキャッチ後の通常再開

遅延行為と懲戒(時間稼ぎの扱い)

露骨な時間稼ぎ(ボールから離れて再開を遅らせる、交代選手が過度に歩く、ボールを抱えて放さない等)は懲戒対象です。懲戒自体も加算に含まれるため、結果的に相手のプレー機会を増やす逆効果になり得ます。観戦時は、遅延が繰り返されると掲示分が伸びやすい点にも注目しましょう。

出来事 加算 理由
交代(複数連続) 手続きでボールが動かない
負傷評価・担架 安全確保のため停止
VARチェック 映像確認に時間を要する
得点後の祝福 再開までの実時間を反映
通常のスローイン準備 × 競技の想定内の短時間
通常のゴールキック準備 × 競技のリズムとして許容
小競り合い・抗議が長引く 再開が著しく遅れた場合
  • 加算=競技外の停止
  • 非加算=通常の再開準備
  • 遅延行為は懲戒+加算で“逆効果”

表示と記録のルール(表記・終了の扱い)

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掲示は第4の審判員が整数分で行い、表記は「45+◯分」「90+◯分」など“+”で示されます。掲示は最小限であり、終了の笛は主審の裁量。アディショナルタイム中にゴールや負傷、VARがあれば、掲示より長くなることがあります。記録上は得点時刻を「90+◯分」と表し、後半の追加時間帯の出来事として整理されます。

掲示の分数と秒切り捨てのルール

表示は整数分で、実際の停止時間は端数を考慮したうえで切り上げて目安にします。掲示後は時計の進行が“固定”されるわけではなく、追加の停止があれば必要に応じて上乗せされます。

表記例(90+◯分/45+◯分 など)

  • 前半の得点:45+2分(前半AT2分内)
  • 後半の得点:90+6分(後半AT6分内)
  • PKで前半終了時に追加:45+◯分の表記が用いられる

アディショナルタイム中の再延長の可否

AT中の負傷・VAR・抗議などで再び停止した場合は、その時間が更に上乗せされます。掲示分で“必ず終了”ではなく、公平性を確保するための柔軟な運用が行われます。

シーン よくある誤解 正しい理解
掲示5分で7分プレー 「表示より長い=不正」 AT中の新たな停止で上乗せ
90+10分の得点 「規定外」 長時間の停止があれば起こり得る
掲示直後の笛 「必ず満了まで」 極端な例を除き最小限の達成で可

近年長くなった背景と国際動向

「サッカー アディショナルタイム」が長く感じられる背景には、VAR導入による確認時間の増加、得点後の祝福・抗議の可視化、選手の安全配慮(特に頭部・重症対応)の徹底、戦術的交代の高度化など複数の要因が重なっています。一方で、リーグや大会は「本質的なプレー時間の確保」と「過度な長時間化の抑制」のバランスを探り、運用ガイダンスの調整やマルチボール運用の最適化などで“止まらないサッカー”を志向しています。

VAR導入・得点後の祝福時間の反映

VARは判定の正確性を高める一方、チェックやオンフィールドレビューで時間を要します。また、ゴール後のセレブレーションやVAR介入の有無によって再開までの実時間が大きく変わるため、その影響を反映するとATは自然に伸びがちです。

国際大会での長時間化の事例

世界規模の大会では、厳密な時間管理の方針が採られ、実際に失われた時間をより忠実に反映するためATが二桁分になる試合も散見されました。安全配慮・公正性・透明性の観点から、長めのATは「不自然」ではなく「実態反映」の結果だと理解すると腑に落ちます。

短縮化や見直しに向けた動き

各リーグは、再開手順の標準化、交代・ボール供給の効率化、必要十分な説明の徹底などで、プレーの流動性を高める工夫を続けています。観戦者としては、試合ごとの方針(例えば再開促進やウォーミングアップ枠、ボール補給体制)にも注目すると、ATの長短が“方針と出来事の積み上げ”で説明できるようになります。

  • 伸長要因:VAR・安全配慮・祝福時間
  • 大会方針:実時間の忠実な反映
  • 短縮策:再開手順の最適化と周辺運用の改善
要素 ATへの影響 運用のトレンド
VAR 長くなりやすい 確認の迅速化と説明の明確化
安全配慮 状況により長い 頭部評価の徹底
再開手順 短縮に寄与 マルチボール・迅速な配置

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まとめ

アディショナルタイムは“空費された時間”を補正するための追加時間で、算定は主審、掲示は第4審が担います。加算対象や表記の基礎を押さえれば、終盤の攻防や戦術意図が立体的に見え、観戦の解像度が上がります。

  • 加算対象:交代・負傷・得点後・VAR 等
  • 表記:90+◯分/45+◯分(再延長の可能性あり)
  • 近年の傾向:長時間化と透明性の強化