PK戦は、サッカーの試合で勝敗を決するための最終手段として採用される特別なルールです。
特にトーナメント形式の大会では延長戦でも決着がつかない場合に実施され、選手や観客の緊張感が極限まで高まる瞬間です。
しかし、「PK戦とPKは何が違うのか?」「キッカーの選び方にルールはあるのか?」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
- PK戦の基本的なルールと手順
- 参加可能な選手数やGKの交代制限
- 反則やサドンデス時の対応
本記事では、サッカー経験者はもちろん、観戦初心者でも分かりやすいように、PK戦のルールや実施の流れを詳細に解説します。誤解されやすい用語の違いや最新の国際ルールにも触れつつ、JFA(日本サッカー協会)やFIFAの公式ガイドラインに準じた情報を元に、正確かつ丁寧にご紹介していきます。
PK戦とは
サッカーにおいて「PK戦」とは、延長戦でも決着がつかなかった場合に勝敗を決定するための方式です。これは「Penalty Kick Shoot-out」の略称であり、国際的にも「penalty shootout」または「Kicks from the Penalty Mark(KFPM)」と呼ばれています。
PK戦の定義と目的
PK戦は、試合の引き分けを避けるための最終手段として導入されており、特にトーナメント戦では必須の制度です。通常のプレーではなく、ゴールキーパーとキッカーの一対一の勝負を通じて、どちらがより多く得点できるかで勝敗を決します。
✔ 延長戦後に決着がつかない場合に実施
✔ 各チームが交互に5回のキックを行う
✔ 5回の合計得点が高い方が勝利
いつ実施されるか(延長戦後・同点時)
PK戦は、90分の試合時間と延長戦(前後半15分ずつ)の合計120分間でも勝敗がつかない場合に適用されます。特にW杯や天皇杯などのカップ戦では一般的です。
PKとPK戦の違い
「PK」は通常試合中に反則によって与えられる直接キックのことを指しますが、「PK戦」は試合終了後に勝敗を決めるために行う方式です。ルールも形式もまったく異なるため、混同しないよう注意が必要です。
英語表記(penalty shoot‑out, KFPM)
国際ルール上、「penalty shoot‑out」はFIFAやIFABの文書でも使用されます。また、「Kicks from the Penalty Mark(KFPM)」という表記も同義で使われており、正式な競技規則で記載される言い回しです。
日本サッカー協会における用語変遷
以前は「PK合戦」と表現されることもありましたが、現在の日本サッカー協会(JFA)では正式に「PK方式」または「PK戦」として統一されています。
日本の競技規則も国際ルールに準拠しているため、表現の整備が進んでいます。
PK戦の進め方
PK戦の進行には、試合終了後に実施される特有の流れがあります。主審によるコイントスから始まり、先攻・後攻の決定、そして各チームのキッカー選出と進んでいきます。
コイントス/ゴール選択
PK戦の直前、主審はコイントスを行い、まず「どちらのゴールで蹴るか」を決定します。通常、両チームのキャプテンが立ち会い、表裏を選びます。この選択は、風向きやスタンドの配置などが影響することもあります。
先攻・後攻の決定方法
ゴールを決めた後、もう一度コイントスを行い、どちらが先に蹴るか(先攻・後攻)を決定します。これは心理的優位に関わるため、戦術的にも重要な要素とされています。
キッカー選出と順番決定
PK戦に参加できるのは、試合終了時にピッチ上にいた選手のみです。選手は任意の順番でキッカーとして登録でき、交代や補充は認められません。
また、1人の選手が2回蹴るのは原則禁止であり、まず全員が1回ずつ蹴ったあとに再び順番を決めます。
項目 | 内容 |
---|---|
参加選手 | 試合終了時にピッチ上にいた選手のみ |
順番 | 監督やキャプテンが事前に指定可能 |
2巡目 | 全員が1度蹴った後に順番再設定 |
参加資格・人数調整
PK戦に参加できるのは、試合終了時点でピッチ上にいる選手のみです。これは競技規則で明確に定められており、途中でベンチに下がった選手や交代済みの選手は参加できません。
さらに、選手数に差が生じている場合や退場者がいる場合にも、公平性を保つための調整が行われます。
試合終了時の出場選手基準
試合終了時にピッチに立っている選手は、11人以下であってもPK戦に参加できます。チームが退場などで9人になっていた場合、9人で順番を組みます。
逆に交代枠が残っていても、試合終了時点で交代していなければ出場できません。
※ポイント:ベンチに控えがいても追加参加は不可!
負傷・退場による人数補正
PK戦前に一方のチームに退場者が出た場合、相手チームも選手を減らす必要があります。これを「リダクション」と呼びます。これは人数の公平性を保つための措置であり、主審の指示に従って控え選手がベンチに戻される形で調整されます。
GK交代時の対応
試合中にゴールキーパーが負傷した場合、ゴールキーパーを交代するルールがありますが、PK戦に入るとこの交代も制限されます。
例外的にGKがPK戦直前に負傷した場合に限り、試合終了時点でベンチにいた選手の中からGKへの交代が許されます。
PKの基本ルール
PK戦では、通常のPKとは異なる形式で蹴り合いが進行されます。ゴールの位置、助走、審判の合図、ボールの動きなど、厳密なルールが存在しています。
ペナルティーマークと助走
PK戦は、ペナルティーマーク(ゴールから11m地点)にボールを設置し、選手が正面から一定距離をとって助走を行った後にキックをします。ボールを止めた後のフェイントやスローな助走は許容されますが、主審の合図なしに蹴ると反則になります。
キック後のボールインプレー扱い
試合中のPKとは違い、PK戦でのキックは「ワンプレーのみ」とみなされます。つまり、ボールがゴールポストに当たって跳ね返っても再キックはできません。一度キックされた後のボールはプレー対象外となり、GKや他選手が追撃することはできません。
ルール項目 | 説明 |
---|---|
助走方法 | 正面からのフェイント助走はOK |
再キック | ゴール後の跳ね返り再蹴は禁止 |
審判の合図 | ホイッスルの後で蹴らなければならない |
再キック・反則時の処置
選手がホイッスル前に蹴った、ゴールキーパーがラインを早く出たなどの反則があった場合、再キックや無効扱いとなります。状況によっては、キッカーに警告やイエローカードが出されることもあります。
反則と制裁
PK戦では、選手とゴールキーパーの動作が明確にルールで定められています。ここでは、反則が発生した場合の対応と制裁措置について詳しく解説します。
キッカーの反則
ホイッスルの前にキックを行った場合や、不自然なフェイントでGKを過剰に欺こうとした場合には、無効扱いまたは再キックが命じられます。また、悪質な行為があった場合は警告(イエローカード)が提示されることもあります。
ゴールキーパーの反則
GKはキックの瞬間まで両足をゴールライン上に保つ必要があります。もし早く動き出してボールをセーブした場合は反則となり、相手キッカーに再キックの権利が与えられます。これも2回以上繰り返すと警告対象となります。
他の選手/審判員の介入時処理
他の選手がキック中に妨害したり、審判に抗議するなどの行為は厳しく対処されます。フェアプレーの精神が強く求められる場面であり、妨害や故意の遅延行為には即座に制裁が科されます。
✔ 主審の合図前に蹴る → 無効 or 再キック
✔ GKがラインを離れる → 再キック+警告
✔ 他選手の妨害行為 → 警告・退場の可能性
サドンデス方式
PK戦では各チームが5人ずつ蹴り終えても同点の場合、6人目以降による「サドンデス方式」へと移行します。これは、蹴った瞬間に勝敗が決まる可能性のある緊張感あふれる場面です。
5本同点後の追加キック
5人が蹴り終えてスコアが同点の場合は、6人目以降が1人ずつ交互にキックを行います。どちらかが決めて、相手が外せばその時点で試合終了となります。
2巡目以降の順番ルール
最初の11人全員がキックを終えた場合、2巡目に突入します。ただし、1巡目と同じ順番を守る必要はなく、自由な順番で再設定が可能です。監督の戦術や選手の調子を見て調整されます。
キッカーの再順番と制限
同じ選手が複数回蹴ることは可能ですが、11人全員が蹴り終わるまでは繰り返し蹴ることはできません。2巡目からは再登場が許されるため、得意な選手が再び選ばれるケースもあります。
- 5人で決着がつかない → サドンデス方式へ
- 同点が続けば全員がキック → 2巡目に突入
- 2巡目は順番変更可能、繰り返しのキッカー選出もOK
この方式では精神的な強さが試され、PK戦の「ドラマ性」を最大限に引き出す展開となります。W杯などでは歴史的な名勝負も多数生まれており、観客も手に汗握る場面です。
まとめ
PK戦は単なる運任せのゲームではなく、戦術・心理戦・規則が絶妙に絡み合う、サッカーにおける重要な決着方法です。選手の精神力や監督の判断力が試される場面であり、しっかりとしたルール理解が求められます。
本記事で解説したように、PK戦の開始条件・進め方・反則時の扱い、そして5人以降のサドンデスの仕組みまで、実に細かなルールが存在します。特に国際試合では、FIFAやIFABによる統一ルールが適用されており、正確な知識が求められます。
今後、サッカー観戦やプレーにおいてPK戦の場面に出くわした時には、この記事で得た知識を活かして、より深くゲームを楽しんでください。理解を深めることで、PK戦の駆け引きや緊張感がよりリアルに感じられるはずです。