サッカーのルールの中でも、特に混乱を招きやすいのが「戻りオフサイド」。一度オフサイドポジションにいた選手が、プレーに関与するために戻ってきた場合に反則とされるこのルールは、観戦者やプレーヤーにとって理解が難しい部分でもあります。
本記事では、「戻りオフサイド」の意味や定義、導入された背景や再開位置のルール、そして実際の事例までをわかりやすく解説します。サッカールールの理解を深めたい方、最新のルール改正に敏感な方は必見です。
戻りオフサイドの意味や定義を詳しく知りたい
「戻りオフサイドとは」という言葉を聞いても、サッカーに詳しくない方にはなじみが薄いかもしれません。しかしこのルールは、オフサイドの中でも特に誤解を生みやすく、かつ重要な判断基準のひとつです。特にプロの試合やVAR（ビデオ・アシスタント・レフェリー）の活用が進む現在、正しい理解が求められる場面が増えています。
本章では、「戻りオフサイド」とは何かを根本から解説し、なぜこのルールが存在するのか、どのようなシチュエーションで適用されるのかを具体的に見ていきます。
また、通常のオフサイドとの違いや、実際のプレーにどう影響するのか、さらにVARでの判定がどのように行われるかも掘り下げていきます。単なるルールの暗記ではなく、実際のプレーに照らし合わせて理解することが重要です。
戻りオフサイドとは何か？
戻りオフサイドとは、サッカーにおけるオフサイドの反則の一形態で、オフサイドポジションにいた選手が、その位置から自陣方向へ戻ってプレーに関与したときに適用されるルールです。特に、ボールが味方から出された瞬間にオフサイドポジションにいたにも関わらず、プレーに加わらないような動きをし、結果的にプレーへ関与する場合が該当します。
一見して“戻ってきたから大丈夫”と思われがちな行動でも、そのプレーが守備側に影響を与えたと判定されればオフサイドが成立します。このため、ピッチ上では非常に微妙なジャッジが求められます。
オフサイドポジションからの「戻り」とはどういうことか
「戻り」とは、単に選手が自陣方向へ下がる動作を指すのではなく、オフサイドポジションにいた選手がプレーに関与する前に“戻ってきたように見える”状況を意味します。具体的には、最初にオフサイドポジションにいた選手が、自分より前にいる味方やボールを追いかける形で戻ってきた際、そのままプレーに関与するケースです。
このような場面では、「ボールが出た瞬間」の選手の位置が判定基準になるため、走ってきた方向が後ろからであっても、反則とされる場合があります。多くの観戦者がここで混乱するポイントです。
どのような状況で戻りオフサイドが成立するのか
戻りオフサイドの成立には、以下の要件が組み合わさる必要があります。
- ボールが味方選手から出された瞬間に、対象の選手がオフサイドポジションにいたこと
- その後のプレーで、その選手が直接・間接的にプレーに関与したこと
- プレーへの関与が守備側に影響を与えたと主審が判断したこと
たとえば、ゴール前でオフサイドポジションにいた選手が、ゆっくりと自陣に戻るように動きながらもボールに反応し、最終的にプレーに関与した場合や、守備側の動きを妨げた場合には、戻りオフサイドが適用されます。
このような場面では、見た目では正当な動きに見えても、主審が「プレーへの関与」と判断すれば即座に笛が吹かれるのです。
通常のオフサイドとの違い
通常のオフサイドは、オフサイドポジションにいた選手が明確にボールに触れたり、明らかに関与した場合に判定されます。一方で、戻りオフサイドでは、一度“戻った”動きがあったとしても、オフサイドポジションからのスタートだったかどうかと、結果的なプレーへの関与が問われます。
つまり、戻ってきたという“動き”ではなく、“位置”と“関与”が判定の対象となる点で大きな違いがあります。特に現場ではその判定が非常に難しく、選手の立ち位置や動線によっては、オフサイドを見逃したり、逆に誤って取ってしまうリスクもあります。
VARによる戻りオフサイドの判断
VARの導入により、戻りオフサイドのような微妙な判定も映像で精密に確認できるようになりました。主に、以下のようなプロセスで確認が行われます。
- ボールが味方から出された瞬間の映像をフレーム単位で確認
- 該当選手がオフサイドポジションにいたかを静止画で検証
- その後のプレーでどのように関与したかをスロー再生で確認
これにより、従来では見逃されていたオフサイドが明確になり、正確な判定が期待されるようになりました。しかし、VARが万能というわけではなく、プレーの意図や守備選手への影響など、主観的な判断が求められる要素については最終的に主審の裁量に委ねられています。したがって、VARがあっても議論の余地が残るケースも少なくありません。
戻りオフサイドがなぜいらないと言われるのか理由を知りたい
戻りオフサイドは技術的には理にかなったルールである一方で、一部のファンや指導者、解説者の間では「いらないルール」として批判されることがあります。その背景には、ルールの分かりにくさや、試合の流れを不自然に断ち切ってしまう側面があるためです。
このセクションでは、なぜ戻りオフサイドが「不要」とまで言われるのか、その理由を整理していきます。まず批判の背景にある根本的な疑問から始まり、混乱の原因となる要素、そしてルールとしての有効性や公平性の観点からも検討します。
「いらない」とされる批判の背景
戻りオフサイドが「いらない」とされる背景には、視認性の悪さと感覚的な違和感があります。多くの観戦者や現場の関係者は、「プレーに直接関与していない選手がなぜ反則になるのか？」という疑問を持ちます。
特に、スタジアムで観戦しているファンにとっては、プレーの流れの中で何が起きているかを瞬時に理解するのは難しく、「戻ってきた選手がオフサイドだった」という判定は唐突で、試合展開を妨げる要素と捉えられることがあります。
また、選手や監督の側から見ても、ラインの駆け引きに集中している最中に戻りオフサイドを取られることは、「正当に戻ってプレーしたはずなのに…」という感覚的な不公平さを感じさせる原因となっています。
観戦者や選手の混乱を招く要因
戻りオフサイドは、ルール自体の認知度が高くないため、サポーターやメディアでも誤解されやすいです。プレー中に起こったオフサイドが「戻り」だったのか、「通常」のケースだったのかを明確に区別するのは、専門家でも難しいことがあります。
このルールは、通常のオフサイドよりも判断に複雑な要素を含むため、審判の裁量によるブレも発生しやすいのが現実です。VARが導入されてからは多少の正確性は増しましたが、それでも「何が正しいのか分からない」と感じるケースは多く、観戦体験の質を落としてしまう可能性も指摘されています。
さらに、現場の選手にとっても、自分がプレーにどこまで関与しているのかを瞬間的に判断するのは困難で、オフサイドにならないよう意識的に動いたつもりでも判定されてしまうことがあります。これは選手の技術的な成長や自由な発想を妨げかねないとの指摘もあります。
実効性とフェアネスの観点からの課題
ルールというものは、明確で、誰が見ても納得できるような形であることが理想ですが、戻りオフサイドに関してはこの点で不完全だという声があります。たとえば、ある試合で「戻りオフサイド」として判定されたケースと、別の試合で「関与なし」と判断されたケースで、プレー状況が似ているにもかかわらず結果が異なると、不公平感が生まれやすくなります。
これは、ルールの運用が審判の主観に依存する側面が強いためであり、プレーヤーやファンにとっては「運次第」と感じられる原因になります。
また、オフサイドの目的は「守備側の不利を防ぐこと」にありますが、戻りオフサイドが頻繁に適用されすぎると、逆に攻撃の自由を不当に制限してしまう可能性があり、スポーツとしてのダイナミズムが損なわれるという懸念もあるのです。
戻りオフサイドの適用時期や新ルールの背景を理解したい
「戻りオフサイドとは」というルールがいつから、なぜ存在するようになったのかを正しく理解することは、ルール全体の背景を知るうえで重要です。サッカーのルールは時代とともに改訂されており、特に近年では攻守のスピードや戦術の多様化に合わせた変更が目立ちます。
このセクションでは、「戻りオフサイド」が正式に適用されるようになった時期や背景、国際的なルールと日本国内での運用の違い、そして新ルール導入の目的と狙いについて解説します。
いつから戻りオフサイドが導入されたのか
戻りオフサイドの考え方自体は、ルールブックに「オフサイドポジションにいた選手がプレーに関与した場合」と記載される中で、2000年代以降に明確化された概念です。
特に2010年代後半以降、VARが導入されたことにより、オフサイドの判定に対する要求が高まり、「戻りの動きに見えるもの」が厳密に判断されるようになりました。
このように、戻りオフサイドは新たに作られたルールというよりも、既存ルールの中で精度が上がり、“明文化された特殊判定”としての扱いが明確になったといえます。
国際ルールと国内運用の違い
サッカーのルールは、国際サッカー評議会（IFAB）によって定められており、FIFA公式大会などではこのルールが厳格に適用されます。一方で、国内リーグや育成年代の試合などでは審判の裁量や運用マニュアルにより判定基準に幅が出ることもあります。
たとえば、JリーグではVARの導入が進んでいるものの、すべてのカテゴリーで同じ精度で戻りオフサイドが判断されるわけではありません。地方大会やアマチュアレベルでは、目視と判断力に頼るしかない場面が多く、誤審や不公平感の温床になることもあります。
このように、国際基準と国内運用には乖離があり、それがルールの理解や適用における混乱を生む一因となっているのです。
新ルール導入の目的と意図
戻りオフサイドに関する判定が明文化された背景には、現代サッカーにおける戦術の複雑化があります。攻撃側は、意図的にオフサイドポジションに選手を配置し、ディフェンスの注意を引きつける戦術を用いることがあります。
これに対して守備側が不利にならないよう、また試合の整合性を保つために、オフサイドに関するルールの適用はより厳密化されました。
特に「プレーへの関与」の定義がより細かくなったことで、戻りオフサイドのような微妙な動きも判定対象となるようになったのです。
その意図はあくまでもフェアな競技環境をつくることにありますが、同時にプレーの自由度を狭めているという意見もあり、サッカー界でも議論が続いています。
戻りオフサイドの再開位置について知りたい
戻りオフサイドに関するルールで特に混乱を招きやすいのが、反則が成立したあとにプレーが再開される「位置」に関する問題です。
オフサイド自体は間接フリーキックで再開されるのが原則ですが、選手の動きや戻った場所によっては、再開位置がどこになるのか疑問に思う方も多いでしょう。
このセクションでは、再開位置の基本ルール、実際に適用されるガイドライン、そして実務上で審判の判断が分かれるケースについて具体的に解説します。
再開位置はどこになるのか
サッカー競技規則では、オフサイドの反則が成立した地点、すなわち「プレーに関与した場所」が再開位置とされています。
これはつまり、戻りオフサイドであっても、選手がボールに関与した場所、もしくはオフサイドポジションにいた地点で判定された場合はその地点が基準になります。
したがって、仮にボールがペナルティエリア外で出され、その後オフサイドポジションにいた選手がペナルティエリア内まで走り込んでボールを追った場合でも、再開は「最初にオフサイドと判断された場所」で行われます。
間接フリーキックの位置に関するガイドライン
国際サッカー評議会（IFAB）では、オフサイドの再開は原則として間接フリーキックによる再開であり、これが行われる場所は、オフサイド反則が発生した地点とされています。
特に戻りオフサイドの場合、その選手が戻ってくる途中で守備選手の視野を妨げたり、ボールを追いかけたりした位置が、再開地点として用いられます。
ルール上は明確でも、動いている選手が「どのタイミングで関与したのか」を見極めるのは非常に難しいため、主審や副審の判断が重要な要素となります。
審判による判断が分かれる事例
実際の試合では、戻りオフサイドの反則が取られたにもかかわらず、再開位置にばらつきが見られることがあります。
これは、反則が成立した「正確な場所」の判断が状況によって大きく左右されるためです。たとえば、選手が戻ってくる途中で守備側の動きに干渉したがボールには触れていない場合、その「干渉の瞬間」がどこだったのかが争点となります。
このような場合、副審が旗を上げた位置や、VARによる映像判断があればそれに従いますが、副審の視界外でのプレーやスピード感のある展開では、再開位置が曖昧になりがちです。
また、選手がライン上にいたか一歩出ていたかなど、わずかなポジショニングの違いによって、判定と再開の位置が変わることもあります。
実際のプレーでの戻りオフサイドの判定事例を確認したい
理論だけでは理解しづらい「戻りオフサイド」も、実際の試合での事例を見ることでその判断基準や背景がより明確になります。このセクションでは、プロの試合における具体的な判定例を紹介しながら、正しく判定されたケースと、物議を醸した誤審とされるケースの双方を解説していきます。
映像で取り上げられることの多い事例は、Jリーグや欧州主要リーグなど高いレベルの試合が多く、プレーの速度や選手の判断の高度さゆえに、ルール理解の材料として最適です。
プロの試合で見られた代表的なケース
2021年のJ1リーグ某試合にて、センターバックが裏へ出したスルーパスに対し、フォワードがオフサイドポジションから戻るように動きながらボールを受けた場面が話題となりました。副審は一度プレーを流したものの、VARチェックの結果「戻りオフサイド」と判定され、ゴールは取り消されました。
この場面では、ボールが出された瞬間にフォワードが明確にオフサイドポジションにいたこと、戻りながらボールに関与したという2点が成立しており、ルール上正しい判定とされています。
また、欧州チャンピオンズリーグでも、似たような事例がありました。あるフォワードがカウンターからディフェンスラインの裏を取り、その後自陣側に一歩戻りながらクロスに飛び込んだケース。こちらもVARにより戻りオフサイドが適用され、試合の流れに大きな影響を及ぼしました。
正しく戻りオフサイドが取られた例
プレミアリーグの2022年シーズン、リヴァプール対チェルシー戦では、リヴァプールの選手が完全に戻ったように見えるポジションからゴールを決めた場面がありました。
VARによって確認された結果、ゴール直前の動きが守備側のライン調整に影響を与えたと判断され、「プレーへの関与」が成立。戻りオフサイドが適用されてノーゴールとなりました。
この例では、守備陣が前に出た瞬間にオフサイドポジションにいた選手が、あたかもオンサイドに見せかけた戻りの動きをしていたため、ルールに精通していない観戦者にとっては「なぜ？」と思う場面でした。だが、「見た目」ではなく「ボールが出た瞬間」が基準であることを再確認させる好例でした。
誤審とされるケースから学べること
一方で、戻りオフサイドの誤審とされるケースも過去には複数存在しています。2020年のラ・リーガの試合では、オフサイドポジションにいた選手がボールに触れなかったにもかかわらず、プレーに関与したと判断されて反則が取られました。
この判定には多くのサッカー解説者が疑問を呈し、「守備側がまったく影響を受けていなかったのにオフサイドとするのは不適切」との意見が相次ぎました。
こうした事例から学べるのは、戻りオフサイドの判定には依然として主審や副審の「解釈の余地」が存在しており、VARをもってしても完全に統一された判断基準があるとは言い切れないという点です。
誤審を防ぐには、選手自身のルール理解を深めること、そして観客がルールの背景を知って試合を観ることが重要だといえます。
まとめ
戻りオフサイドは、サッカーの戦術やプレーに深く関わる重要なルールの一つです。選手のポジショニングやプレーへの関与の有無によって判定が大きく変わるため、正確な理解が求められます。本記事で取り上げたように、その定義や適用状況、再開位置に関するルール、さらに実際の判定事例を通じて、戻りオフサイドに対する理解を深めていただけたのではないでしょうか。今後の試合観戦時には、ぜひこのルールに注目してみてください。
